いまようやくはっきりし始めたのは、一杯のコーヒーとは、それをいれる時間と手順、そして出来上がったコーヒーの香りだ、という事実だ。コーヒーという液体よりも、コーヒーの香りのほうが、精神への作用は高いという。<片岡義男「一杯だけのコーヒーから」>
かつて引用したことのある片岡義男の一文である。
コーヒーの魅力を凝縮した大好きな言葉だ。
コーヒを自分で焙煎するようになって1年半ほどたつ。
簡単だしおいしいよ、とコメントを頂き、見よう見まねで焙煎をはじめた。
ウェブサイトや書物で学び、試してみることを繰り返した。
コーヒーを焙煎する楽しみもまた香りなのであった。
生豆を火にかけてしばらくして漂う独特のにおい。
青臭いような、芋を調理するようなにおいが短いあいだだけする。
その後、少しずつコーヒーらしい香りがあらわれてくる。
どこで焙煎を止めるか、は鼻がたよりだ。
コーヒー豆の持つ魅力を、いちばんに感じられる瞬間を嗅ぎ分ける。
香りでそのポイントを探す。
一回一回の焙煎が勉強である。
焙煎した豆を挽くときの香り。
素晴らしい。
このかぐわしさも発見だった。