渋谷にHMVが復活するというウワサを夏前に聞いた。
正確にはネットで記事を見た。
復活するのは中古レコードショップということだった。
この時代にあらためてレコード屋を出店するとはチャレンジングだなぁと読んだ。
近所のレコード屋さんで八月半ば、店主と常連客の会話を聞いた。
「HMV行きました?」
「まだなんですよ、どうでした?」
「フツーですね。値段はユニオンと同じくらいかな」
「そうなんですか」
「コンディションは若干良いかな」
「それなら慌てていくほどじゃないですね」
私はその会話でオープンしたことを知った。
さくさくとレコードをチェックしながら、ふむふむと聞いたのだった。
HMVが中古レコードショップを開く。
それが象徴するのは、CDの時代は終わり、ということだろうか。
音楽業界は、CDから有料データ配信へシフトしようとしている。
ハイレゾ、である。
CDに対して、圧倒的にコスト的に優位であろう。
制作コストしかり、物流コストしかり。
有料データ配信に対してCDは勝ち目は無い。
音楽業界が有料データ配信へシフトする一方で、聴く側の多くは録音音楽に対してお金を出さなくなっている。
無料の方向へ雪崩をうっている。
YouTube化ということか。
無料化の流れに対して、有料データ配信は勝ち目があるのだろうか。
その先の音楽業界、ミュージシャンのあり方はどうなっていくのだろうか。
録音音楽を楽しむ場所は、屋外で聴くか、家で聴くかに分類できる。
屋外で聴くなら断然データだろうし、多くの人は屋外だけでなく家でもデータで十分だ。
よほどのモノ好きが家で音楽をレコードで聴くが音楽業界は直接その恩恵を受けるのではない。
その「よほどのモノ好き」というのは、多くの場合「よほどの音楽好き」である。
「よほどの音楽好き」を音楽業界はきちんと育てないことには未来は無いのではないか。
飲み屋さんでお酒を飲むことに対して家で飲むことを「家飲み:イエノミ」という。
音楽を家で聴くことを「家聴き:イエキキ」と呼ぶのはどうだろう。
一人じっくり音楽を聴くのもいいよね、なんて風に使う。
携帯オーディオ&イヤフォンで済ませてしまわずに、家のリスニング環境も充実させてみよう、ということだ。
まあ、オーディオ業界がずっと薦めていることではあるが(笑)。
考えてみれば、外で聴く環境って実はあまりない。
これは、携帯プレイヤで聴くことではなく、じっくり音楽を聴ける場所という意味。
昔でいえばジャズ喫茶とかロック喫茶とか。
音楽を聴いて踊る店ではなく、音楽をじっくり聴ける店。
生演奏ではなくて、録音された作品を鑑賞する場は意外なほどない。
無いということはつまり、求められていないということなのか。
そうそう、HMVの話だった。
渋谷に開店したのは、HMVレコードショップという。
場所は東急ハンズの近く。
DANCE MUSIC RECORDSがあったとこと言えば、ハイハイあそこねという人も多いだろう。
先日行ってきた。
2階もあってなかなかの広さである。
棚の配置もゆったりとしている。
空間の使い方が贅沢である。
ユニオンやレコファンのぎちぎち感とはえらく違うが、目指すところが異なるのは明白。
ユニオン、レコファンの「コア系」に対して、HMVは「おシャレ系」である。
かつての渋谷系発祥店のメンボクヤクジョといったところか。
レコード袋も写真の通りのおシャレ系である。
紙製ってのがまた良い。
やられた。