テレビを見ていた娘が、断固とした口調で、しかし笑いながら言った。
「ユーアーノットマイファーザーエニーモアッ!」
画面には、ソフトバンクのCMが流れていた。
娘は言ったあとでケラケラと楽しそうに笑っていた。
私も妻もあっけにとられた。
「あんたなんかオトーサンじゃない」
私たち夫婦は、娘の言った言葉の意味に驚いたのではない。
なぜならそれは、今流れていたCMの中で、白い犬の息子役である黒人男性が言った言葉を繰り返したにすぎないのだ。
妻がぽつりと言った。
「私には聴き取れなかったのに…」
その言葉に私は再度あっけにとられた。
これはつまりこういうことだ。
小学校6年生できちんと英語を習ってもいない娘が、CMで流れた英語をきちんとリスニングできていた。
それを口に出して言ってみたところ私たち夫婦はビックリギョウテン驚いた。
娘には分かった英語が妻には理解できていなかった事実にも私は驚いたのだった。
この春娘は小学校を卒業して中学生になる。
身長だって妻に追いつこうかという勢いだ。
いつまで私にギュって抱きついてくれるのかなあ(笑)。