これは あなたの手帖です
いろいろのことが ここには書きつけてある
この中の どれか 一つ二つは
すぐ今日 あなたの暮しに役立ち
せめて どれか もう一つ二つは
すぐには役に立たないように見えても
やがて こころの底ふかく沈んで
いつか あなたの暮し方を変えてしまう
そんなふうな
これは あなたの暮らしの手帖です
雑誌「暮らしの手帖」を拾ってきた。
古紙回収のため道ばたに積み上げられていた。
手に取って見ると1950年代後半から60年代前半のものだった。
13冊あった。
冒頭の言葉は、すべての号の表紙裏側に書き付けられており、現在進行形で今も引き継がれている。
いわば「暮らしの手帖宣言」である。
こんな心意気が、今もこの雑誌の編集部に正しく生きているのか、は知る由もない。
ただ、この心意気が今も生きているとしたら、なんて素晴らしいことだろうと思う。
拾ったものでもあり、けっして保存状態は良くないのだが、表紙の美しさはもちろん、紙面の1ページごと神経細やかにデザインされていることに驚く。
写真のクオリティ、トリミング、レイアウト、そして花森安治の描き文字。
そしてもちろん記事である。
58年刊行の44号には「電気の買い方」という特集がある。
高度成長前夜、電気需要が高まっていたであろうこの頃に、電気はいかに作られ、どのように家庭に届き、どのように値段が付けられているか。
そして「電気機器を買うことは一っしょに電気も買うときことです」と、機器の消費電力について考えをうながしていく。
その後、暮らしの手帖の売りであった、商品テストに紙面はつながっていく。
ここでいまいちど「暮らしの手帖宣言」を読んでみるとこの雑誌の姿勢が実感できる。