買わなかったレコードの話をしよう。
レコード屋に行って手に持って、欲しかったけどやむなく棚に戻す。
例えばそんな、買わなかったレコードの話をしよう。
手に取ったけど、よくよく考えて、やっぱいいかと棚に戻すレコード。
オークションで、狙ったけどついに落札できなかったレコード。
財布の中身を気にしながら、手に持った数枚のレコードの中からどれを買うのか迷うレコード。
冷静に考えればさほど欲しいわけじゃないことに気付いてしまうレコードがある。
レコード屋ではときどき「買うこと」が目的にすり替わってしまうことがある。
レコードを買いにきているのに手ぶらで帰るのは寂しい、そんな気分に負けてしまう。
家に帰って、何でこんなレコード買ったんだろう、とほとんど聴きもしないことを何度も経験している。
だからこそレコード屋では、聴きたいレコードや欲しいレコードを本気で探さなければいけないんだ。
気分に流されてはいけない。
ネットオークションでレコードを狙っても、次々と入札が入り落札できないことは良くある。
予算を超えてしまい諦めざるえないレコードがたくさんある。
熱くなって入札を繰り返し、気が付いたら予算を超えていた、なんてのはいまや良い思い出だ。
すれっからしのレコード好きは、ネットオークションの怖さを知ってしまった。
現在価格が予算を超えたら、パっと気持ちを切り替えて諦める。
ウォッチリストでどこまで値段が上がるかを眺めるだけにする。
すっかり大人なネットオークションユーザーである。
もうちょっと、もう少しだけがんばろうなんてリミッターを外してでも欲しい良いレコードなんて実はあまりない。
その場の熱くなった気分で入札していたらきりがない。
ネットオークションというのは、私でも買える値段からのスタートするからこそつらいんだ。
店でン万のあのレコードがこんな値段で!なんてね。
買えない値段に上がるのが分かってても夢見てしまうのだ。
そこでしか手に入らないレコードなんてほとんどないのに、そんな気にさえなってしまうんだ。
買わなかったレコードには、買わなかったレコードと、買えなかったレコードがある。
限りある予算の中で、なんとかやり繰りして、私はレコードを買っているから、欲しいレコードをすべて入手できるわけではない。
精一杯手を伸ばしても届かないことは良くあること。
でも高いレコードだけが買えないわけではない。
例えばレコード屋で、財布には千円しかなくて千円のレコードを2枚を手に持って悩む、なんてことがある。
これは切実な問題だ。
究極の選択を迫られる。
どっちにするんだ、自分!
これをして貧乏コレクターの蒐集の醍醐味という気がしなくもない。
ああ、悩ましい。
汗が出てきた(笑)