レコードの外袋について考えている人がどのくらいいるだろうか。
レコードを持ってない人、レコードに興味の無い人はレコードの外袋について考えもしないだろう。
レコードを持ってる人でも、皆がレコードの外袋について考えたりはしない。
一握りのレコード好きだけがレコードの外袋について考えていて、私はその一人なのである。
レコードの外袋にもサイズや素材の厚みなどさまざまな種類がある。
レコードへのこだわり方もさまざまなのである。
私は中学生くらいから本格的に音楽に興味を持ちだしてレコードを買うようになった。
私の行くレコード店では、レコードを買ってもレコードの外袋はくれなかった。
街の普通のレコード店で普通に新譜アルバムがレコードで売られていた。
CDが登場するほんの少し前のことだ。
レコード店では、自分の店名の入ったレコードの外袋を用意している店もあることを後に知ったが、私の地元でそのようなレコード店はなかった。
私は中古のレコードも買うようになった。
街に中古レコード店はいくつかあったが、どの店でも中古レコードを買うと新しい外袋に入れてくれた。
会計の際に、それまで入っていた外袋からレコードを取り出して、新しいピンとした外袋に入れ替えてくれるのだ。
中古レコード店ではどこでもかならずやってくるサービスだった。
私はずっと、レコードをレコードの外袋に入れて保管していたが、あるときすべて棄ててしまった。
レコードをむき出しのまま棚に収めるようにしたのだ。
それは、引越で荷物をまとめている時、レコードの外袋が思いのほかかさばっていることに気付いたからだ。
試しに100枚くらいのレコードから外袋を外してみたら、外袋だけで相当な重さがあった。
すべてのレコードから外袋を外して段ボールに詰めて引越をした。
それからレコードの外袋は必要なくなった。
外袋がなくてもジャケットはそれほど傷むわけでもなくて、気分的にも少し解放されたような気がした。
それから中古レコード店でレコードを買う際には外袋を断るようになった。
コンビニのレジでレジ袋を断るように、レコード店のレジで「外袋はいりません」と言って断った。
悪くなかった。
「外袋はいりません」と言うのがどことなくツウっぽいような気分だった。
ずっと中古のレコードを、何も考えずに買っていたが、あるときからオリジナル盤(※1)ということを意識するようになった。
ある廃盤レコード屋(※2)さんでジャケットにジャストサイズの外袋を使っていた。
状態がさほど良くないジャケットの場合でも、そのレコードの外袋に入れたほうが見栄えが良くなることを知った。
店主に尋ねてみるとジャストサイズの外袋をゆずってくれると言う。
私は再びレコードの外袋を使うようになった。
レコードの外袋をまとめて買って、手持ちのオリジナル盤はそのジャストサイズの外袋に入れるようにした。
それ以降、私の家のレコード棚に収めてあって外袋に入っているレコードは、基本的にオリジナル盤ということだ。
それ以外のレコードは、むき出しのまま棚に収められている。
しばらく前から考えていることがある。
本好きが蔵書票をあつらえて自分の蔵書に貼るというようなことを、レコード好きも何かできないか。
つまり蔵盤票があったら良いのに、ということだ。
ただし、レコードジャケットやレコード盤に加工したり貼付けるなんて無粋なことはしなくない。
となると、レコードの外袋に印刷するのはどうだろうか。
悪くないのではないか。
悪くはないが、レコードの外袋にインクで印刷しては、それが裏ジャケットだとしてもデザインを一部を隠してしまうことになる。
それはあまり美しくない。
ではどうするか。
エンボッサーのようなモノで、レコードの外袋にギュっと版を押すのはどうだろう。
光の具合でうっすら見える程度の蔵盤票である。
オリジナルデザインでこんな蔵盤票ができたらさぞ楽しいだろう。
※1
オリジナル盤とは、あるレコードが最初に発売された時に売られていた古いレコードのこと。
※2
オリジナル盤など特に古いレコードを中心に販売している中古レコード店のこと。