私が小学生の頃、ということはつまり80年頃、子ども達にとって「2001年」「21世紀」という言葉は特別な響きを持っていた。
それは幸せな未来であり、夢の世界を意味していた。
核の脅威やエネルギー問題、環境問題も語られてはいたが、子ども達とってリアルな話ではなかった。
その頃には解決してるさ、くらいの気分であった。
何しろ夢の世界、21世紀である。
「2001年」はそのころ、とんでもない先の話だった。
計算してみて、21世紀を31歳でむかえる事を知っても、なんのことやら理解出来なかった。
紙の上での話にすぎなかった。
そう「2001年」は張るか彼方、バラ色の未来だった。
わたし達はそこで、メタリックな服を着てふわふわ空中に浮かんだ乗り物で高層ビルの間を飛び回る。
宇宙船のような部屋に住み、テレビ電話で会話し、気ままに暮らす。
ロボット達が仕事や日常生活のもろもろの雑事をこなしてくれる。
そんな未来。
時はたち、気が付けば2010年になっていた。
「2001年」は過去であり、「21世紀」は現実になっていた。
新世紀をむかえる頃には、未来という言葉に「夢」の占める割合は寂しいくらいに減ってしまっていた。
私が年をとったからなのか、社会から何かが失われてしまったのか。
未来は希望とイコールだったはず。
いつからこうなってしまったのだろう?
そんな感傷的な気分があったのだろうか、こんなレコードが目に飛び込んできた。
DEODATO / 2001
この素っ頓狂なジャケットはなんだろう。
強い日差しのもと、アルミダイカスト製のビジネスマンはどこを目指し歩いてゆくのか?
ご丁寧にもタイトルとアルミダイカスト製ビジネスマンにはエンボスが施されている。
それにひきかえ裏ジャケは表面を反転しただけなのだが…。
まあこれはCTIレコードの常套手段か。
盤を取り出すと内周には「VAN GELDAR」の刻印が入っている。
期待はいやが上にも高まるではないか。
レコードに針をおろす。
イントロが始る。
…おや…?
なんだか…聞いたこと…ある…ぞ?
これは「ツァラトゥストラはかく語りき(ALSO SPRACH ZARATHUSTRA)」ではないか!
DEODATOのツァラトゥストラといえば名盤「Prelude('72)」である。
そう、このレコードは「Prelude」なのであった。
外見(ジャケットとタイトル)を替えて再発された訳だ。
比べてみれば手持ちの国内盤「Prelude」と見開きジャケットの内側はまったく同じだ。
これはちゃんと確認しなかった私のミスである。
しかしまんまとやられた(苦笑)
随分久しぶりに聴いたこのレコードだが、やはり良い。
ツァラトゥストラは元の曲相もあっていささか大げさにすぎるきらいはあるものの気分はぐっと盛り上がる。
そしてエレピとフルートの響きの素晴らしい「Carly & Carole」。
ブラジリアン・フュージョンといった趣である。
この「2001」はいつ再発されたのか?
バーコードとかはないので80年代前半以前かな?
検索かけてもみると'77年に再発されたレコードのようだ。
カタログナンバーは、オリジナルが「CTI 6021」、この再発は「CTI 7081」。
マスター番号は「RVG 87678 A/B」で共通。
なるほどの高音質である。
まあ、私もこんな事でもなければ国内盤で十分なレコードではあったけれど(笑)
21世紀というかつての未来を生きているちび達はどんな将来を夢見ているのか?
尋ねてみた。
ちび1号(8歳女子):漫画家
ちび2号(6歳男子):機動隊員
そう、未来は君たちにかかっているのだッ!