セバスチャン・サルガドの「アフリカ」展が始まった。
オープニング当日、本人の講演会が開かれることを知り、入場整理券を求めて東京都写真美術館へ自転車で出発。
その道すがらペダルを漕ぎながらこの美術館が出来た頃のことを思い出す。
もう20年くらいたつんだなァ。
まだガーデンプレイスは出来ていなくて、工事現場の片隅で営業中って時期に初めて行ったのだった。
その頃の写真美術館の立派な入り口は今、使われていないんだよね。
目黒寄りのはじっこにあるから恵比寿駅から遠くて不便なのが使われなくなった理由か。
なんて考えながら自転車をこいでいたらその使われていない入り口に着いてしまった(笑)
現在の入り口へどう移動したら良いのか分からず一瞬あせった(笑)
着いて見ると既にそれなりに列が出来ているではないか。
150〜200人はいるくらいだろうか?
さすがサルガド。
整理券の配布が始まり20分くらいでチケットを入手できた。
フウ。
しかし、サルガド本人の話が生で聞けるなんてね。
いったん帰って昼食をとった後、講演会場の小学校へ。
始まりを待つあいだ周りを観察(笑)
美術展、写真展にいる人たちの雰囲気そのままだな、なんて思う。
当たり前だけど。
自由業風の男性たち、さりげなくおシャレな人とはっきりお洒落な人がいる。
あるいは、かなり風変わりな人(笑)
地味目なインテリ系おじさんたちはストレート系のざんばらな髪型と特徴のないデザインの眼鏡がかえって特徴的。
一見お洒落に無頓着なようで良く見ると上質なジャケットを着ていたりする人もいる。
おぬしやるなってカンジ(笑)
こういう方の奥様ってきれいでシックな方が多いように思う。
私の前にいたのがまさにそのようなご夫婦であった。
いっしょの娘さんは大学生くらいだろうか。
これまたお母様に似て素敵でね。
これ見よがしでなく、シンプルでナチュラルなおシャレさん。
絵に描いたような素敵家族じゃないか(笑)
こういうところには、時にハッとするような女性がいるものだ。
モデルや芸能人、いわゆる美人というのではないけれどあの凛とした雰囲気はなんだろう。
意思の強さを感じさせる背筋の伸びた素敵な人。
いいなァ。
あと、高価なカメラ持っている人が多かったのはさすがにサルガド展だし、iPhone率高めだったかも。
定刻を少しすぎてサルガド氏が登場。
日本とブラジル、そして写真展のテーマであるアフリカの歴史やつながりについて。
環境問題から現在進行中のビッグプロジェクト「ジェネシス」について語ってくれた。
残念ながら写真そのものについての話はあまり無くその点が少々残念であった。
いかに「アフリカ」は撮られたのか?というあたりの撮影秘話みたいなの期待しちゃうじゃないですか、ねえ(笑)
最後に質疑応答の時間があり、3人目、最後に指された普通のおばんさん風の方の質問が素晴らしかった。
あなたの作品はすべて白黒だが、カラーでは撮らないのか?
シロウトナンデスガ、みたいな質問だがこれはなかなか出来ることじゃない。
私などにはおよそ思い浮かばないし浮かんだとしてもとても聞けないだろう。
彼の写真への根源的な問いになっているのではないか。
凄いなァ。
それに対しての回答はおおよそ次の通りであった。
私は白黒の写真家であり今後もそうあり続けるだろう。
ではなぜ私が白黒写真を撮るのか。
それは色彩を排除することで対象を「客体化」しているのだ。
その客体化により、見る人の想像力の入る余地が写真に生じる。
私の撮った写真に見る人の想像力が加わり作品が完成するのだ。
つまり見る人の数だけ私の作品が出来上がる。
なるほど。
これが一番の収穫であった。
このおばんさん、ただ者じゃないぞ(笑)