BEACH BOYSの隠れた名盤、BEACH BOYS' PARTY! である。
クリエイティビティの頂点にある、Pet SoundsとSummer Days (And Summer Nights!!)との間にぽっかりと浮かぶ信じられないくらいリラックスした好盤である。
これもある意味で奇跡的なレコードではないかと思う。
彼らの代表作として取り上げられることはまずないかもしれないがファンにとっては大事な素晴らしいレコードである(でしょ?)。
しかし、このアルバムはレコード会社との年間でのリリース枚数契約をこなすための苦肉の企画だったというから驚きだ。
当時のBEACH BOYSは、年間にアルバムは何枚、シングルは何枚発売するというノルマをレコード会社に課せられていたというのだ。
まあ、その頃のバンドは概してそのような状況だったのだろうけれど。
しかしそれにより、こうしてビーチ・ボーイズ青年期の貴重なスタジオ風景をインティメイトな雰囲気で楽しめるのである。
このレコードのジャケットに写るのは青春を謳歌する青年達。
一夏の想い出。
ビーチキャンプの風景のようだ。
ガールフレンドを交えた幸せな彼らは、レコードの中でも実に和気あいあいと楽しんでいる。
アコースティックにして気の利いたアレンジ、目の覚めるようなハーモニー。
選曲も洒落ていて、トラッドソングやビートルズやディランのカヴァーも登場する。
これぞまさに永遠の夏、ビーチボーイズの世界観そのものである。
当時のビーチボーイズといえば飛ぶ鳥を落とす勢いのアイドルバンド。
その活動は熾烈を極めていたらしい。
レコーディング、ツアー、テレビ・ラジオへの出演、各種の取材などなど。
そしてその繰り返し。
ビーチボーイズのクリエイティブな部分の一切を担当していたブライアン・ウィルソンの精神状態は既にぎりぎりの状態だったらしい。
マネージャーである父親との確執、レコード会社からのプレシャー、メンバーと意識のずれ。
想像するに余りある厳しい状況であり、その後の彼とメンバーとの関係を思うとなんともやりきれない気持ちになってしまう。
ここで聞くことの出来る青春の風景と実体はあまりに隔たっているのだ。
しかし、そのことを分かった上でもこのレコードは非常に希有な美しいレコードである。
まるでホームレコーディングのようなさりげなさの向こうに聴こえてくる極上のヴォーカルハーモニー。
一点の曇りもない未来が彼らには約束されているように見える。
このレコードには、あるバンドのまさに絶頂期の一コマを記録したドキュメントなのは間違いない。
しかし、ドキュメントだからといって必ずしも彼らのすべてが、真実が写っている訳ではない。
ドキュメントとは、ある視点を元に編集がなされているのだから。
この時の映像は残されていないのかな。
「コンプリート・パーティ・セッションズ」なんてCDの企画はないのだろうか?
もしかしてブートはあるのかもしれないな。
今回は前回の記事へのコメントに触発されて書きました。
Special Thanks To osamushiさんってことで。