MONOmonologueモノ(物→コレクション)とMONO(モノラルサウンド→レコード)をこよなく愛するオヤジの徒然日記。

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詩集 妖精の詩 16:39

ずらっと並んだ本の背表紙を眺めて進む。
渋谷東急の古書展に出掛けてきた。
ぐるっと会場を二周程巡る。
疲れてきた。
手ぶらだけどそろそろ帰ろうかという気分。

目の端に飛び込んできた水色の背表紙を見て固まる。
まったくの不意打ち。
がつんと来た。
落ち着けと自分に良い聞かせながらその本を手に取る。

これってあの本ではないか?
まさか見つけられるとは思ってもいなかったので「メルヘンチックなタイトルの本」としか覚えていなかった。
古書店や古書市に出掛け一通り眺めた後で、あの本ないかな、ともう一回りしてみるくらいゆるやかに探してきた。
ないことを確認するために。
なのにいま、目の前にそれらしき本がある。
信じられないけど、これってあの本なんだよな?

その本のことはグラフィックデザイナーの平林奈緒美のエッセイによって知った。
この本への愛情と、入手の顛末を紹介していたのだ。
その「詩集 妖精の詩」は葛西薫によってデザインされた世にも美しい本なのだそうだ。
「葛西薫」
「世にも美しい本」
欲しいというのではなく「見てみたい!」と強く思った。

  すごくきれいな水色の布張りの表紙
  明朝体の黒い小さな文字でタイトルが箔押ししてあるだけの表紙
  これ以外は考えられないというような完成された文字組でレイアウトされ
  軽くて柔らかい和紙のような紙に、絶妙な圧で活版印刷されていた

これは平林奈緒美にして何年探しても見つけることが出来なかったという本なのだ。
目の前に現れるなどとは思っていなかった。
エッセイを読んだだけなので本の姿すらまったく知らなかった。
その上、書名さえうろ覚えでは確かめようもないか?

慎重に外箱から取り出し、ページをめくる。
これがあの「世にも美しい本」なのだろうか?
見た瞬間に分かっていたことだが、完璧なコンディションである。
奥付に「造本」のクレジットがあり、葛西薫の名前も並んでいた。

これだ!
間違いない。

なんとはない明朝体をただ並べたように見える。
なのにその文字の連なりがとても美しい。
墨絵を見るようだ。
文字と文字、文字列と文字列にある空間。
ページの余白。
紙の質感。
はかなさ。
上品さ。
つくづく贅沢な本だ。
帯まですべてに配慮が行き届いている。

果たして私ごときが持っていてよいのだろうか?

時にそんな貴重な品が手元にやってくることがある。
この本がまさにそれである。
不思議な巡り合わせ?
どうして誰も気付かなかったのか?
誰も手に取らなかったのか?
縁があった、で片付けてよいものか?
ほかに相応しい人がいるだろうに、とも思う。
もちろん、私のところに来てくれて嬉しい。
なんども手に取って、眺める。
その度に頬が緩む。
妻が「よかったね」といってくれる。
嬉しい。
フフフ。


詩集
妖精の詩
an anthology

今井とおる
金子みすゞ
大関松三郎
中原中也
小熊秀雄

発行:有限会社ザイロ
発売:光琳社出版
1997年発行


ちなみに、平林奈緒美は手を尽くしたあげくに見つからず、思わぬ展開の末、葛西薫からじきじきに頂いてしまうのだった。



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Comment








サキさん、はじめまして!
とても素敵なコメントありがとうございます。
コメントに気付かないなんて、そんなことはないですよ(笑)。

しかし背表紙だけ見てこの本にピンとくるって凄い引力ですよね。
私は姿さえ見ていなかったのですが(笑)。
「詩集・妖精の詩」によって輪が広がっていくさまがとても嬉しいのです。
t2yさんというこの本の制作にかかわった方からのコメントはかなり自慢です。

この記事でサキさんの興味の世界を少しでも広げることが出来たのだとしたら、これに勝る喜びはありません。
機会があったら葛西薫さんの仕事をまとめた本なども是非ご覧になってみてください。
そして、よろしければこれからもときどきここを覗いてみてくださいね。
posted by mono-mono | 2012/02/04 11:24 PM |
はじめまして。詩集・妖精の詩を検索し、こちらのブログにたどり着きました。実は、辿り着いたのも随分と前の話だったのですが、記事が2009年のものでしたので、コメントをしても気づかれないだろうなぁと思い、こっそり写真や記事を見るだけに留まっていました(笑)

私は、おそらくは前の方がコメントで仰っている雑貨屋、それもその「雑貨屋が紹介された本」を読んで、以来ずっとこの本を探しています。もっとも、その本に載っていたのは、妖精の詩の背表紙だけだったのですけれども(笑)

単純に素敵な本だと思いました。メルヘン好きな私にはタイトルも興味深かったですし、試しに調べてみると、デザインにもかなりの拘りがあるように感じられました。とはいっても、私は本の知識もなければデザインも学校で少しかじった程度で、まるで素人なのですが(^^;)それでも、強く惹かれるものがあって、ゆるゆると各所を巡っては探しております。

しかしこのブログを見ただけでも、本当にたくさんの人に愛されている本なのですね。なんだか嬉しくなりました。本ってやっぱり素敵だなって改めて思いました(^^)いつか実際に手に取って拝見出来る日が来ますように……私ごときが手にして良い本ではないかもしれませんが(笑)

mono-monoさん、素敵な記事をありがとうございました、とても参考になりました。ブログの更新、頑張って下さい。ではでは。突然失礼しました!
posted by サキ | 2012/02/03 9:53 PM |
t2yさま、感激です!
コメントありがとうございます!!

制作にかかわった方からコメントを頂けるなんて!
本当に嬉しいです。
この本がどんな風に作られたのかを想像するとわくわくします。
葛西さんと一緒仕事をするってどんなだろう?とか。
「t2y」というお名前も、なんだかとても気になります。

「もうこんな贅沢な本はつくれないと思います」
活版は嘉瑞工房なんですよね。
大事にします!
今でも手にして開くだけで嬉しいです。

光琳社はとても魅力的な本を次々出していました。
「TOKION」という雑誌のこともときどき思い出します。

本当にコメントありがとうございます!
posted by mono-mono | 2012/01/03 9:34 AM |
この本検索してきました。ぼくは葛西さんとこの本の制作にかかわりました。しかしながら光琳社がなくなった際に持ち出せず所有していません。今でも時折探しています。
でも色んなところで多くの人がこの本を賞賛しておられてとても嬉しく思います。ありがとうございます。
ちなみに挿絵は大竹 伸朗氏、製本は京都で和綴じ製本にしています。文字はすべて本物の活版印刷です、ジンク版ではありません。もうこんな贅沢な本はつくれないと思います。大事にしてあげてください。
posted by t2y | 2011/12/30 11:00 AM |
haTshさん、ごめんなさい。

よかれと思ったのですが、かえって刺激してしまいましたね(笑)
フフフ。
おっしゃる通り、読むたびに気付きのある対談です。
葛西さんも糸井さんも魅力的です。
posted by mono-mono | 2011/08/22 11:48 PM |
ほぼ日の記事、教えていただいてありがとうございます。
特に「文字にも居心地がある」のくだり、特になるほどと思いました。
デザイン全般にいえますね。
もう一度、時間をおいて再読すると違った発見がありそうです。

妖精の詩の実物が見たくなるという症状が余計に悪化しましたヨ(笑)
posted by haTsh | 2011/08/22 11:07 PM |
haTshさん、どうも!

ほぼ日のこの記事はご存知ですか?
http://www.1101.com/kasai_kaoru/index.html
とても素晴らしいので是非ご覧になってみてください。

図書館とはなかなかグッドアイディアですが、なかったすか。
かなり特殊というか趣味的な書籍なんで難しいでしょうね。
私の地元の図書館も調べてみましたがありませんでした。

この本は帯も活版印刷なんです。
かなり贅沢な本です。
英語版も実は狙ってます(笑)
posted by mono-mono | 2011/08/21 9:22 PM |
この青、鮮やかですね。中身の装丁は想像するしかありませんが、この発色に劣らないんだろうな。真っ白なこの本の海外版もネットで見てみましたが、このブルーには敵わないです。

実物が見てみたい、県内の図書館を横断検索すればどこか1冊ぐらい所蔵してると思いましたが・・・考えが甘かったです。
posted by haTsh | 2011/08/21 8:28 PM |
初めまして、そしてコメントありがとうございます!

私ごときがこの本を入手してしまい、熱心にお探しになっていらっしゃる方には大変申し訳ないような気もしますが、もっと自慢したいような気持ちも若干わいてきたりしています。
スイマセン。
でもいいでしょ〜(笑)
ほんとうに美しいんですから!

葛西薫でこの本探している人ってよほどの好事家か堅気じゃないのでは、と思いきややはりデザインのお仕事をしていらっしゃるということで大変に納得です(笑)
是非とも、このような素晴らしい本を世に送り出して頂きたい!と応援しております。

> 地道に古書店などをまめにチェックするしかないようですね。

コレクターの端くれとして「諦めなければいつかか必ず欲しいモノは手に入る」と思っております。
いつの日か必ずその日がやってくることでしょう。

もしブログなどお書きになっていて差し支えなければ是非ともお教えいただきたいものです…。
よろしければまたコメント欄からご連絡をお待ちしております。
では!
posted by mono-mono | 2009/09/22 11:31 PM |
はじめまして、mono-monoさん。
「妖精の詩」で検索したら、
こちらのサイトにたどり着きました。

僕もこの本をずっと欲しいと思って探している一人です。
デザインの仕事をしているので、
いつかこんな佇まいのある本を作ってみたいと
思っています。

最近、ある雑貨屋さんのコーナーで見つけたのですが、
でもそれは非売品だったので、mono-monoさんが羨ましいです。
(しかも、渋谷で手にしたとはさらに羨ましい)

たまに、オークションや日本の古本屋の探求書のコーナーに
投稿してみたりするのですが、
いまだに手にすることができません。

地道に古書店などをまめにチェックするしかないようですね。
その反動で、葛西薫さんの手掛けたその他の美しい本を
買いあさっています。
posted by | 2009/09/20 10:37 AM |
cozyさん、どうも。
素敵なブルーなんです、ほんとうに。
頬ずりしたくなるくらい(笑)

コンディションが良いだけに責任感じます。
シミ作っちゃったり退色させちゃったらどうしようって(笑)

幸田文さんの「番茶菓子」良いですね。
私も是非読みたい1冊です。
posted by mono-mono | 2009/08/17 10:17 PM |
ひでさん、どうも。
「手に入れたい」というよりは「見たい」一冊だったんです。
欲しい気持ちも少しはありましたが、まさか入手出来るなんて。
ビックリです。
もう、嬉しくて嬉しくて(笑)
posted by mono-mono | 2009/08/17 10:16 PM |
mono-monoさんがこれほど書かれるとはすごい本ですね。

化粧箱と表紙の文字の精緻な感じから
おっしゃる事が伝わってきます。

しかし このブルーは美しいですね。

>果たして私ごときが持っていてよいのだろうか?
そんな事はありませんよ
mono-monoさんにはふさわしいですよ。

私事ですが、
先日フトしたことから手に入れた「幸田文」の初版本は別の意味で美しく
今 一番読んで面白く、宝物になりました。
posted by cozy | 2009/08/17 7:58 PM |
日頃、あちこちにアンテナを張り巡らせていた成果でしょうね。
この本の事については全く存じ上げませんが、mono-monoさんの手に入れた嬉しさが伝わって来ます♪
posted by ひで | 2009/08/17 3:51 PM |
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